あなたと私と嘘と愛
そんなわこちゃんが監督と連絡してきます、と部屋を出る。
優斗はまだ複雑そうな顔だったけど、母はそんなの気にしてない様子で私へと視線を移す。
「ところで亜香里、あなた何かあった?」
「え…」
「さっきから見てるとあなたの方が病人みたい。顔色が悪いわよ」
ドキリとした。
鋭いなっていうか確信をつかれ、あからさまに強張った顔を向けてしまった瞬間更なる一言が。
「彼と喧嘩でもしたの?」
わっ。
「そう言えば今日ってクリスマスじゃない。なのにこんなとこにいつまでもぼーっとしていていいの?彼はどうしたの?」
「そ、それはお母さんが倒れたって聞いたから…」
「いつも私のことなんてまったく無関心なくせに?」
じっと何かを読み取るように見られ、口ごもる。
この瞳は嫌いた。
そっちこそ普段私に関心ないくせに、こういう時に限って鋭いというか、簡単に嘘が暴かれそうで、私の誤魔化しを簡単に見破ってくるような視線が苦手。
「べ、別に何もないから。向こうもちょうど急用ができて家に帰ろうとしてたとこだったし」
一瞬坂井さんのことを言おうか迷った。
紳士で優しかった彼が実はストーカーでしたって言ったらどんな反応がくるんだろう。
正直頼りたい、だけどやっぱり言いにくい。ニョキッと天の邪鬼な性格が顔を出す。