あなたと私と嘘と愛
乗ったはいいけど会話がない。
自分から話す気にもなれないし、重い気持ちは重いまま。
(助手席じゃなくて後ろがよかったんだけど…)
右側に優斗の気配を感じながら深い息を吐く。
しょうがないから窓の外を眺めることにした。
「気分悪かったら寝てていいよ。まだ家まで30分はかかるし」
そうか、まだ30分もかかるのか…
それに若干の憂鬱を感じながらも適当に相槌をうつ。
優斗の方は見ずにそっと瞳を閉じた。
すると、暫くして鞄に入っている携帯が鳴った。
ドキリとする。
この時間に連絡がくるのは坂井さんしかいない。
再び心臓がバクバクと音を立てる。
見るのも嫌で当然出るのも怖かった。
「…出なくていいの?」
優斗の疑問視はもっともだけど、怖くて怖くて体がすくむ。
体がたまた震えだしそうになり、たまらずぎゅっと鞄を握りしめる。
「後でかけ直すから…」
音をサイレンとにし、気付かれない呼吸を繰り返す。
じわりじわり寒気が襲う。