あなたと私と嘘と愛

「寒い…」

ポツリ出てしまった言葉に信号待ちで止まった優斗がこっちを見てしまう。

「風邪でもひいた?」

「…そう、かも…」

一瞬目を合わせ曖昧に答えると、優斗の顔が近付き手が額に伸びてきた。
それを黙って静かに見いる。ドキッとしたけど体がシートに張り付けられてるかのように動けなかった。

「熱は無さそうだけどね」

「風邪の引き始めだったらやだな…」

自分の両手をクロスして腕をさする。
落ち着け。落ち着け。
とにかく少し冷静にならなきゃ。

ふと気を抜くと先程の恐怖が込み上げてしまいそうで、どうにかして意識をそらしたかった。

「冗談抜きで顔色悪いよ」

じっと観察されるように見られ、口ごもる。
どう返事をしたらいいのか、どんな顔をしたらいいのか分からないでいると、信号が青になり優斗の手が私から離れてく。

「もし気持ち悪くなるようなら言って?」

「…ん…」

その優しい声に何だが不思議と涙が出そうになった。

心細い。
でも言えない。
だけど彼の隣はどこか落ち着ける。
いっそ坂井さんのことを打ち明けてしまおうかと、口を開きかけそうになったとき、車がピーピーピーという音と共に静かにゆっくり停車した。

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