あなたと私と嘘と愛
それからあれよあれよと母に急かされて、私は都内の高級ホテルの前へいる。
フロントの手続きは優斗がしてくれており、ここまで連れてきた母はこれからまだ映画の撮影が入っているのだといい、さっさと帰ってしまった。
本当せっかちと言うか、逞しい人だ。
「受付終わったよ。どう行ける?」
「…あ、えっと…」
優斗に鍵を見せられて一瞬たじろいだ。
だって今から泊まるとこは最上階のスイートだ。
しかも何を考えてそうしたのかは分からないが、優斗と同じ部屋。
(…これ、まずくない?)
母はいったい何を考えてるのか。でも母の決めたことは絶対で優斗も素直に従っている。
「あ、あの、本当にいいんですか?」
部屋に入る直前念のため恐る恐る聞いてみた。
変わるなら今だ。
別に今更とは思うけれど、何も一緒の部屋じゃなくても隣同士で泊まるという選択技もあるわけで、
「は、何が?ていうか何か問題あるの?」
けど優斗は私の言いたいことが理解できない様子。すっとぼけた顔になる。
「別に私に付き合って貰わなくてもいいですよ?あなたはあなたで泊まるとこぐらい自由にしてもらっていいし」