あなたと私と嘘と愛
「いいねぇ、桃パフェかぁ。うちの彼女も好きなんだよね」
そこへ1人、一番若い田宮(たみや)先生が現れた。
急に話に入ってきたのにはビックリしたが、スタッフが出入りする裏口で雑談していた私達が悪いのもある。
「田宮先生お疲れ様です。これから彼女とデートですか?」
振り向きざま、真由が見上げる格好になりながら言葉を返す。
先生は180センチは超す長身なので、160センチも満たない私達はいつもこんな体勢だ。
「いや、今日は残念ながら…」
涼しげな目尻を下げた先生はちょっぴり寂しそうだ。
彼が溺愛家というのはうちの病院では有名な話し。
会ったことはないが、噂では雑誌を飾る有名モデルのようで、美男美女のカップルらしい。
そんな彼女は現在仕事でパリにいるようで、会える日はまちまちなのだとか。
「先生達さえよければぜひ、うちのお店にパフェ食べに来てくださいよ」
「それは嬉しいなぁ。喜んで、彼女にも聞いてみるよ」
「あ、でも覚悟してくださいね。今時の洒落た店じゃないですよ?内装は古いけど味は絶品です」