あなたと私と嘘と愛
真由が自信ありげでウインクをすると、「先生もそれは楽しみだな。むしろ落ち着いて食べれそうでいいよ」なんて笑って返してくれた。
なんて言うか、田宮先生も医者なのに気取ってなく私達アルバイトにも気さくに接してくれる人だ。
だから女性患者からの評判も当然いいわけで。
「悪いけどそこ退いてくれる?」
そこへ現れたのがもう1人の医師、南条(なんじょう)先生だ。
相変わらずのっぺりとした表情を張り付けて、少し冷淡な口調で私たちの中を裂いてくる。
「雑談するなとは言わないけど、するなら場所を考えてくれると助かるね」
一瞬周りがぴきっとなる。
通りすがりに冷たく目を細められると体がギョッと縮こまる。
だけどそれは当然私だけではないようで、真由も同じ。「すみません…」と蚊の泣くような声を出して、うわって顔を向けていた。