あなたと私と嘘と愛

言いながら過去の記憶が甦る。

幼稚園の時、送り迎えはいつもうーちゃんだった。
あの人が来たことは一度ぐらいしかない。
運動会や発表会、イベントの時だっていつも仕事仕事で私のことは二の次だった。

それが不満で泣いて駄々をこねた私に母が言った言葉は「もっと大人になりなさい」だった。

「うちは普通の家とは違うのよ」と。

「ママもお仕事頑張るから亜香里ももっと強くなりなさい」って、5才の子供に堂々と吐く台詞だとは思えない。

だからあの時私は幼いながらに悟ったんだ。
母にとって一番は仕事で、私がどんなに頑張ったって仕事には敵わないんだって。

それでも母が好きだったから我慢したけど、クラスで母のことをバカにされていじめられた時だって耐えたけど。でも母が新しい父を連れてくる度にそれは次第になくなった。

(そっか、私は2番にもなれないんだ…)て分かった時、母のために頑張るのをやめた。

あの人を好きでいるのもバカらしくなってやめた。

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