あなたと私と嘘と愛

それから数日経った時だった。
帰って来た母に突拍子もないことを言われたのは。


「…は?何で私が…」

「いいじゃない。一緒に行きましょうよ」


やっぱりこの人が帰ってくるとろくなことを言い出さない。
眉間に皺を寄せる私に対して、彼女はさも楽しそうに私にパンフレットを差し出した。


「ここ、最近リニューアルしてすごくいいって評判なのよ」


そこは某有名旅館だった。
写真と宿泊内容などが載っていた。


「だから何?どうして急に温泉?話の流れが見えないでしょっ」


突然言われた。家族旅行しようって。
優斗も入れて三人で温泉に行こうと言い出した母にピキッと怒りを覚える。
しかも三日後にそれを決行すると言う。


「だってね、もう予約しちゃったし」

「は?」

「ほら優斗もいいって。家族旅行も悪くないって言ってくれてるし」


なっ…

本当なの?
隣の優斗を見れば済ました顔して「そうですね」なんて頷いている。
なら私の意見は?
私の意見は完全に無視して勝手に話が進んでる。

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