あなたと私と嘘と愛
そして旅行当日。
そんな私の不安は現実のものとなる。
母の無邪気な笑顔。いつもその笑顔に騙され、傷付き振り回されてきた。
けど今回だけは違う。今回だけは大丈夫だろうという私の期待を一本の電話が見事に裏切った。
「…え、待ってよ!」
それは母からの着信だった。耳に当てた瞬間悪魔のような裏切りを告げられた。
「本当悪いと思ってるわ。でもね、どうしても今日じゃないとダメな撮影なの。分かってちょうだい」
「でも今さらっ」
「今度改めてお詫びするわよ。もう時間がないのよ。優斗にも宜しく言っておいて、じゃあ」
「ちょっ」
ツーツーツー
一方的に通話を切られた。
(ちょっと…)
呆然と立ち尽くす私に背後から近付く影が。何事かと優斗の顔が覗き込む。
「悠里さん何だって?」
「そ、れが…」
蒼白な顔して優斗を見た。
すると一瞬で彼の顔から笑顔が消えた。
それで全てを理解したのだろう。
優斗は数秒後「ああ、そっか…」と言い残し若干の苦笑いを残す。
「…撮影で来れないって…」
「ふーん」
やっぱりこうなった。
だから言わんこっちゃない。
私の不安は的中し、母への怒りが込み上がる。