あなたと私と嘘と愛

「ばかばかしい、もういいよ帰ろうっ」

「え?」


此処まで来たけどしょうがない。
残念だけどさすがに優斗と二人で泊まるわけにはいかない。
そんな非常識なことがあってはいけないと思いボストンバッグを掴むと予期せずその腕をガシッと捕まれる。


「亜香里」

「えっ」


呼び止められて優斗の方へと振り返る。
彼はそんな私を何故かまっすぐ見つめてきたと思ったら突拍子もない発言を向けてきた。


「そっちじゃないよ。旅館はこっち」


そして私の手から鞄を奪う。
それどころか、帰ろうとした私の前に通せんぼするかのように姿勢をただし、「もうチェックインできるんじゃない?」なんて微笑んだ。


「へ?」

「あとは俺が持つよ」


待って待って。
思わず優斗の袖を掴んだ。
状況がついていかず慌てて優斗を呼び止める。
彼は何を言ってるの?今の私の話をちゃんと理解してる?


「か、帰るんじゃないの?」

「帰える?どうして?」

「は?」


思わず上擦った声が出た。
そして優斗の顔を凝視する。
これはどういう意味だろう。

理解が出来ず大きく瞬きをする。

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