あなたと私と嘘と愛
「此処まで来て帰るつもり?」
「だ、だって…」
すました顔して優斗はさらりと言った。さも当然かのように「そんなの勿体ないんじゃない?」なんて言って私のことを驚かせた。
それにキャンセル料も取られちゃうよ、なんて言われたら返す言葉を濁してしまう。
「で、でも…」
違う意味で動揺してきた。
心臓がバクバクする。
以前のホテル生活とは状況が違う。
それに優斗は私と正反対なことを思ってると分かった瞬間激しい動悸が…
「わ、私と二人になっちゃうよ?」
「え、ダメなの?」
そこで一瞬フリーズする。ますます優斗の顔を凝視する。と、そこでようやく優斗の顔が困ったように歪む。
「ああ、なるほどね。俺と二人では嫌ってことか」
「ちっ…」
違うと言いかけて、慌てて口をつぐむ。
ち、違うけど。それは違うけど。でもやっぱりどこか駄目な気がして気が引ける。
だってよく考えれば非常識なわけだし、戸籍上いくら親子でも私達は本当の親子じゃない。
さすがに二人で一泊するなんて悪いことのような気がしてならない。