あなたと私と嘘と愛

な、なんか生々しい。

ホテル生活の時は部屋が沢山あったため、寝るときは別々だった。
だけど今回は違う。

隣り合わせにベッドは置かれてあって、もちろん一緒の空間で寝ないといけない創りになっている。
平常心、平常心…

大丈夫だから、と、
一呼吸して優斗を見ればすでにバッグを置き、コートもハンガーに掛け終え女将さんの挨拶と説明を聞いている。


(ふ、普通だ…)

ごく普通に行動してる。
この状況に対してまったく気にしてない様子の彼を見ながら一人でやきもきしてるのが少しづつ恥ずかしくなってくる。

…が、


「今日はご夫婦でご旅行ですか?」


女将さんの一言で途端「えっ」と凍り付く。
優斗からやや離れた場所に立っていた私はあからさまに動揺し、気の聞いたことも言えず優斗へと目を向ける。


「まぁ、そんなとこです」


けどすぐに優斗から助け船が落ちる。
否定も肯定もしない言い方だったけど、 優斗の落ち着きぶりには感心にさえ値した。

…そう、否定しなかった。
これは彼なりの配慮だとはすぐに分かったけど、私と夫婦だって言われても否定しなかった彼に不謹慎にも心が揺れた。

嬉しいと思ってしまう。

< 251 / 471 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop