あなたと私と嘘と愛
「ちょっとちょっと、聞こえてるんでしょ〜?無視しないでよぉ」
思った以上の力強さに視線を合わせるしかなかった。
何が面白いのかニタニタした笑みを浮かべながら、全身に嫌らしい視線が注がれる。
「やっべ、まじ可愛いね君。大当たり!ていうか一人なの?」
「俺達さ、今から部屋でぱーっとやるんだけど良かったら君もどう?他にもメンバー沢山いるよ」
早口で捲し立てられて無反応になる。
温泉まで来てどうして一人だなんて思うのだろう?
頭の中では「最悪」しか浮かばない。たちの悪い酔っぱらいは昔から大の苦手だ。
だからさっさと断りを入れて優斗に電話しようと思ったのだけど、肩を捕まれたまましつこく言い寄ってくる。
「君色っぽいね」
「すみませんが…」
「大丈夫大丈夫、野郎だけじゃないし可愛い女の子も沢山いるからさぁ」
断ろうとすると二人からひっきりなしに言葉が飛んでくる。喋る隙がない。
それにそんなに大勢いるなら私はいらないんじゃないと思う。
再度強めに拒否の言葉を向けようと意を決めキッと睨む。けど突然背後から人の気配を感じ、もう片方の肩が引き寄せられる。