あなたと私と嘘と愛
テレビだ。
優斗がテレビを付けたのだと気付き側に寄った瞬間、ふいに足を止めた。
何をそんなに真剣に見てるのだろうとその視線を追った時、母が出ていることに気が付いた。
母は黒のドレスを身にまといきらびやかな背景の中口紅を塗っている。
そして1、2分のCMの最後、誰もが魅了される笑みを浮かべた。
それは艶っぽく、まるで宝石のように美しく綺麗だった。
それを真っ直ぐ真剣に見つめている優斗。
ドクン…
その姿に胸が撃たれた。
(なんて切なそうな顔をしてるんだろう…)
それはやりきれないような、もどかしそうな表情。見てるこっちまで苦しくなるようで。
そんな姿に私は体を動かす事が出来なくなり、そのまま数秒彼を見つめたままだった。けど次第に顔が歪む。そのあと自分でもビックリするぐらい冷めた声が出た。
「そんな顔するなら無理にでも今日来て貰えばよかったのに」
ズキズキと胸が痛み出す。
さっきまでの楽しさが嘘のよう。
温まった体にひんやり冷たい空気が流れ込む。