あなたと私と嘘と愛

「あの人にとっての一番は仕事なの。家庭じゃない。それを目の当たりにして寂しくないの?」

優斗の表情が驚きに変わった時、しまったと思った。けどもう後には引けない。

一瞬目を反らそうかとも思ったけど、堪えて優斗を見続けた。

「…どうした?急に」

「だって優斗があまりに…」

寂しそうにするから、なんて最後まで言えなかった。
言えるはずもなく、

「…一つ聞きたい。聞いてもいい?」

じわりじわり言葉に熱がこもる。
そしてこの前真由に見せてもらった雑誌の記事の内容を思い出した。

驚きつつ何?と問う仕草を見せた優斗に聞きたいことは一つ。今までずっと聞きたくても聞けなかったこと。

「母と一緒にいて楽しい?幸せ、なの?」

彼にとってこの環境は幸せなのかと問いたくなった。

本当に母が好き?
あなたは幸せですか?と。

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