あなたと私と嘘と愛

はっとして動きが止まる。
今までにない緊張感が押し寄せて互いに見つめ合ったまま時が止まりそうになったけど、それをいち早く壊したのは他でもないこの私。

「…あ、ごめっ、なんか酔ったみたい。ちょっと頭冷やしてくる、ね…」

ふいに優斗の手がこっちに伸び、私の頬に触れそうになる寸前思考がクリアになる。
なにやってるのと、途端恥ずかしくなった。
だから触れられる前に部屋を飛び出した。


(どうかしてる…)

こんなに感情的になるなんて。しかも涙まで流してしまった。
きっと変に思ったかもしれない。
思われても仕方のないことを口にした。

動揺で何も持たずに再び大浴場に飛び込んだ。
最終時間ギリギリだったため、他に入ってる人は2人ぐらいしかいなかった。
しかもその人達は自分とほぼ入れ違いに出て行ってしまう。

だから頭までぶくぶくつかって反省した。

情けなくて恥ずかしい。
もっと冷静にならなきゃいけないのに。
下手な嫉妬なんて出したらダメだ。
自分が自分でいられなくなる。

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