あなたと私と嘘と愛
それだけじゃない。
せっかく作りかけた家族の絆だって駄目になるかもしれない。
(それだけは…)
嫌だ、と思わずぎゅっと手を握りしめた。
母は今何処にいるかとわこちゃんに聞けば某ホテルで身を潜めてるという。
「暫くはそこで身を隠してもらうつもりです。悠里さんはそんな必要はないと渋ってますけど」
けどそれは事務所からの指示で、いくら身勝手な母でも従うしかないだろう。
社長も今回の記事が最小限になるよう必死で動いてるらしいが暫くはマスコミに追われる日々が続くと思う。
それは私だって同じことで、今朝も早くから家の前にはマスコミの人達がわんさか張り付いている。
だからぐずぐずしてられない。
色々聞きたいこと話したいことは山ほどあるが、それよりまず先にやらなきゃいけないことがある。
「わこちゃん、準備はできてる?」
「はい!今すぐ出られるようになってます」
じゃあ考えてる暇はない。
「行こう優斗!」
私は何も言わない優斗の腕を掴んだ。
今は此処にいちゃいけない。まずは自分達の安全確保が最優先だ。
正直優斗の気持ちを考えると胸が痛い。すごく辛いけど。
「一緒に逃げよう」
「…え?」
「私について来て!」