あなたと私と嘘と愛
逃避行決行だ。
迷ってる暇なんてない。
私は優斗に深めに帽子を被せると自分も同じように被った。そして有無を言わずに優斗の腕を引っ張り玄関を出た。
地下の駐車場には清掃車の車が待機しており、運転席にはうーちゃんがハンドルを握ってる。
これに乗り込んで裏口から出る予定だ。
このマンションは有名人著名人が数多く住んでおり、いざという時の配慮は万全だ。
何かあったときは住人しか分からない裏口から出られるようになっている。
マンションを出る寸前、念のため大きめのサングラスを付けた。
そう、全部打ち合わせ通りだ。
ふいに隣の優斗を見ると、シートに深く背をつけ腕を組み、俯くようにして目を瞑ってる。
とりあえず彼も全てを理解したようにわこちゃんからの指示に従ってくれてはいるけれど、やっぱりその横顔を見るとズキッと胸が痛んだ。
「…ゆ、優斗もサングラスかける?」
なんとか配慮しなきゃとそんな言葉をかけてみると、ふいにこっちを見て「ああ」とうっすら笑ってくれた。
「亜香里、そのサングラスよく似合ってる」
だから少しホッとした。
照れ笑いを浮かべ、予備のサングラスを渡すと私もシートに深くもたれるようにして息をつく。