あなたと私と嘘と愛
本当にすみません!とわこちゃんが大きく頭を下げる。
正直彼女に謝ってほしいわけじゃない。
当然謝罪の言葉を聞きたいのは原因をつくった母なわけで、直接会って話したい。
この時はまだあの人を信じたいと言う気持ちは少なからずあった。
いくらなんでもそんな無責任な行動はとらないだろうと。
母は母で色々考えたうえでの言動なんだって信じたかった。
けど、後々不倫相手とのことが分かってくると、あのスクープ写真を撮られたのがまさかの私と優斗が温泉に行っている日付だった。
母がドタキャンした日だ。
しかも相手の男性は以前母が倒れた時に主治医になった内科医で、その時の出会いがきっかけで深い仲になったと記事には書かれてあった。
そして見出しには「有名女優の破廉恥な生活!」「若い脚本家を自宅に囲いながらの不倫劇!」
なんて目を覆いたくなる記事がづらり。
若い脚本家とは優斗のことだ。
(いったいいつ、何処で優斗のことまでも…)
ショックで言葉も出ない。
どうしてあの人はいつもこうなんだろう。
どうして…
どうして…
息苦しい思いがぐるぐると回る中、その日は優斗とあまり話すことなく重い心境で夜を明かした。
ただ優斗が気がかりで…
こんな裏切りはもう私だけで十分だと正直思う。
けど優斗は…
仮にも自分の妻、愛している人からの裏切りを知った彼の心境を思うといたたまれない。
用意された部屋からそれっきり優斗は出て来ることはなく、私はそんな彼への心配からぐっすり眠ることができなかった。