あなたと私と嘘と愛
「昨日のこと忘れちゃったの?」
「昨日のこと?」
惚ける優斗に確信を向ける。
だって昨日あの人が…という単語を出せば優斗は一瞬目を細めて「ああ」と言った。
「まぁ、悠里さんのことは本人が来るまで待とう」
「えっ」
「俺は雑誌やテレビの言うことは信用しない。本人のみの言葉にだけ耳を傾けようと思って」
「はぁ…」
間抜けな声が出た。
そんな返しがくるとは思わず優斗の顔を凝視する。
「いやでも、優斗だって昨日あんなにショックを…」
「きっとさ、悠里さんは悠里さんなりの理由があるんだと思う」
「で、でも…」
「俺は大丈夫だから、彼女からの真実を待とう」
優斗があんまりにも冷静に話すからこっちが逆に狼狽える。
どうしてそんな…
冷静でいられるの?
普通だったら怒って当然なことなのに、離婚届けを叩き付けたっておかしくないはずなのに。
目の前の優斗ときたらそんな風に母を庇う。
そう、庇ってる。
なんでまだあんな母を庇うの?
分からなくて面白くない。どうかしてる。
さすがの私も苛立った声が。