あなたと私と嘘と愛
「初めてだよ、そんな風に泣いてくれる人」
耳を疑った。
「え?」
「この前の時もそうだった。気付くと予想を越えたことばかりする。亜香里はいつからそんなに俺を心配するようになった?俺のことは憎くて嫌いなはずじゃなかったの?」
「それは…」
「なんか色々反則すぎて気持ちが追い付かない」
「えっ…」
「こうして思いがけず距離を縮めてくるとか、どうして君はいつも…」
「ひゃっ」
ビックリして距離を取ろうと思ったのに、余計目の前の優斗と密着する羽目に。
優斗が反対の腕も私の背中へ回したから。
気付くと両腕が私の体をすっぽり包み込んでいる。
尚更ビックリして顔を上げると至近距離で優斗の顔が。
「まるで今の亜香里はちぐはぐだよ。口では俺を自由にしたいと言ってるのに、体は…本心は俺を離したくないって言ってるように見える」
「…ち…」
「違う?亜香里はさ、もし俺が悠里さんと本当に別れてこの家を出たら今みたいに一人で泣くの?」
「…えっ」
「こんな風に一人でずっと…」