あなたと私と嘘と愛
昼を過ぎた頃、少し散策しようかと2人で家を出た。
優斗が見たいと言ったのだ。
別荘の周りは森に囲まれている。少し道なりを下って行くと綺麗な川もある。
そこには魚も泳いでいて釣りをするのにも最適だ。
特に会話らしい会話があったわけじゃないが気まずい感じもしなかった。
私はというと、やっぱりどこか変に意識してしまい口数が少なくなってしまう。
「お、けっこう魚いるんだな。ほら、亜香里も見てみ」
「あ、うん」
2人して川までたどり着くと優斗が少し興奮ぎみに私を呼んだ。
「魚好きなの?」
「まあね、なんなら明日ここで釣りでもする?けっこう釣れそうな気がする」
「……」
本当に普通だ。
優斗の楽しそうな横顔を見ながら次第に私の気持ちも平常心へ。
やっぱり特別な意味なんてない。
今朝優斗が私に言った「守る」や「側にいる」の言葉は家族として。父親としての立場から言ってくれた言葉に違いない。
私と優斗はあくまでも父と娘の関係。だからもう気にするな。
今考えるべきことは母と今後どうするか。
あの人からちゃんと真実を聞かないと。