あなたと私と嘘と愛
優斗と程よい距離を保ちながら別荘に戻る。
けど優斗は途中、暖炉に使う薪を倉庫から幾つか運びたいと言い、私とはいったん離れてそこへ。
だから私が先に部屋の中に入ったのだけど、ふと、今朝とは違う違和感が。
消したはずの明かりが付いている。
そして部屋が誰もいないのに暖かい。
…て、ちょっと待て。
慌てて玄関に目を向けるとヒールの高いパンプスが。黒く光沢のあるそれを見た瞬間ハッとして私は勢いよく靴を脱ぎ捨てた。
「お母さっ…」
「あら、遅かったわね」
やっぱり母だ。予想通りの人物に焦り、慌てて近くに駆け寄ろうとしたけど、その足は思いとは逆に立ち止まる。
「…なに、やってるの?」
お酒の匂いがする。
バーカウンターに優雅に座る姿。ワイン片手に寛ぐ姿はとてもじゃないけど騒動を起こした人物には思えない。
「なに平然と寛いでるの?」
「だって誰もいないんだもの。待ってても帰ってこないし、暇だから飲んじゃった」
「飲んじゃったって、いつからいるの?いつ帰って来たのよ?」
「そうね、1時間ぐらい前かしら」
そんなに前から…
「だったらなんで電話くれないのよ。くれたらすぐに帰ったのに」