あなたと私と嘘と愛

母を睨む瞳から涙が零れ落ちる。
この感情をどう表現したらいいか分からない。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ。何であなたが泣くのよ」

母に軽蔑の眼差しを向ける。
怒りながら泣く私を見てようやく母が驚きを見せた。

「あなたらしくない。いつもだったらこんなに怒らないじゃない。「あっそ」って一言告げて好きにすればなんて軽くあしらうくせに。あなたこそ変よ」

「…だって優斗が…」

「優斗がなによ」

「可哀想。あんなにちゃんと家のことを守ってくれてるのに。お母さんのこともちゃんと信じてる。信じてずっと待ってたんだよ?」

なのにこの仕打ち。
彼の気持ちを思うと申し訳なくてやるせない。

「ねぇお母さん。本当に優斗に悪いって気持ちはないの?彼に対しての謝罪は?一度は好きになった人でしょ?」

真剣な瞳で母を見た。
一瞬押し黙る母に期待を込める。
これで最後で最後。母に対しての僅かな希望だったのだけど、

「ないわ」

はっきりそう告げられて、足の爪先から崩れ落ちそうになった。
どうしてそんな残酷なことが…

「優斗はあんなにお母さんのこと…」

「だからよ」

「え?」

「私分かったの。だって優斗って私の言いなりすぎてつまらないもの。確かに彼は真面目で優しい。若くて才能もあって素敵な人だと思うわよ。
けどそれだけなのよ。面白味がぜんぜんないんだもの。だから飽きちゃった。もうそれほど必要じゃないの」
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