あなたと私と嘘と愛

この時、私は母のことも自分が今置かれてる立場も全て忘れたいと思った。

それが許されない関係でも一度だけ…
せめて一度だけでいいから貴方に触れたい。
そんな淡い願いを込めながら優斗の頬に触れると、その手を捕まれ彼の顔が近付いてくる。そのままゆっくり彼の唇を受け入れた。

唇を重ね合わせた瞬間、ドクンと心臓が高鳴る感覚が…。
最初は触れるだけのキス。優しく労るようなキス。
それを2、3回繰り返すと緊張しすぎて無意識に全身に力が入る。すると私の耳元で優斗のクスリと笑う声が。

「亜香里もっと力抜いて。ほらリラックス」

「…ぅ、ん…」

そんなこと言われても恋愛初心者の私にはなかなか難しい要望だ。
顔が一気に熱くなる。優斗の声にも敏感に反応してしまう。

「まだキスしかしてないんだけど」

「だって優斗の触れ方が…」

「なに?」

「甘くてえろい…」

「ふ…」

そんな態度にやっぱり優斗はクスリと笑う。
それは光栄だね、なんて言いながらそのまま目元にキス。額にもキス。頬に、こめかみにもキスの嵐が降り注ぐ。
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