あなたと私と嘘と愛

まるで濃密な世界だった。
優斗に抱かれてる最中とても幸せだった。

今まで感じたこのない幸福の波を知れたから。
好きな人と交わる気持ち良さを知れた私はきっともう、これ以上は望んではいけない。
これ以上のものを望んではいけない気がするの。

だってこんな関係やっぱりダメだもん。
例え破綻しているとはいえ、優斗はまだ母のものだ。
戸籍上は私の「父」なわけで、状況が変わってるわけじゃない。

気紛れな母のことだ。
もしまた気が変わって優斗とやり直したいと言ってきたら?
母が優斗を手放さなかったら?

それを考えると苦しさに押し潰されそう…
だからこれ以上は望んじゃだめ、ずるずると優斗との関係を続けていいことなんてないんだよ。

一度だけって決めた。
優斗との関係はこれで最初で最後だってそう決めた。

だからこのままそっと姿を消してしまおうか?
いっそこのまま別荘を出て暫く優斗と離れて暮らしてみる?


好き…
好きだよ…

優斗の寝顔を見て泣きそうになる。

もっと普通の出逢いかたをしたかった。
こんな複雑なかたちでなく、もっと単純な日常の中優斗と出会えてたら、こんなに苦しい思いをしなくてすんだのに。
きっと今とは違う未来があったはずなのに…
< 334 / 471 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop