あなたと私と嘘と愛
「ただいま亜香里」
「……」
ただいまじゃない。ただいまじゃない。
優斗の姿をまじまじと確認して顔が青ざめてくのが分かる。
私と目上が合った途端嬉しそうに目を細める優斗に対してただただ体が硬直する私。
嵌められたー
と分かった瞬間真由の方を見てギロリと睨む。
いったいいつから?どこから話をきいてたのだろうと思ったけど聞かなくても何となく分かる。
近付いてくる優斗のいつになく感じるキラキラとした笑みと、ニヤリと悪い顔を向ける真由に挟まれて嫌でもその答えが分かってしまう。
「ひどっ!親友を嵌めるなんて信じられないっ!」
たまらず口調を強める私を見て真由がようやくここで肩をすくめる。
「いや、誤解だって、別に嵌めようとして話してたわけじゃないし。私も途中で優斗さんが帰って来るなんて思わなかったから」
「嘘っ」
「嘘じゃないって!私はただ、いち早く優斗さんが帰ってきたのに気付いてそれで…」
「それで見て見ぬふりしたって言うのっ?」
「ちがっ、いや違わないとも言えないか…。優斗さんが私に向かって、しーってジェスチャーして口止めするから、何となくそれに乗かっちゃったみたいな?」
「みたいな?って二人とも酷いっ!」
もう穴があったら入りたい。あまりの恥ずかしさで両手で顔を覆うとすぐ、背後に近付く気配が。私の肩にポンっと手を置かれる感触がした。