あなたと私と嘘と愛

シャワーを終え、身支度も済ませると私はそそくさと玄関に向かった。

真由の家に泊まる着替えなどが入ったバッグを抱え、誰にも会わないようにと細心の注意を払う。

優斗には絶対に会いたくないし、母が帰って来ないうちにさっさと家を出たい。

これ以上の面倒だけはごめんだ。
だけどそういう時に限って神様は意地悪をする。
最近の私はことごとく運がないらしい。

玄関を開けた瞬間高いヒールを履きこなした母が目の前に立っていた。最悪なことにバッチリ鉢合わせをしてしまったのだ。


「げっ」

「あら、亜香里ただいま。珍しいはね。わざわざ玄関までお出迎え?」


香水だけはいい匂い。
にこりと微笑んだ彼女にもはや今日は厄日だとしか思えなかった。


「今から出掛けるの。……あ、長旅お帰りなさい」


素っ気なさに嫌味も込めてやった。
あえて長旅と言ったのはこの3ヶ月の間連絡はおろか、何の説明もなかったからだ。

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