あなたと私と嘘と愛


「悠里さんがさんが危篤だ」


優斗は私をしっかりと見てそう言った。
すぐに理解ができずただ優斗を見返すことしかできない私の手を少し強引に引き寄せる。

「時間がない。ごめん、亜香里には酷な現実になると思うけど…」

「……」

そしてそれからすぐだった。
二人してタクシーに乗り込んだのは。
優斗の切羽詰まった声が聞が私の心臓を震わせる。


「さっき吐血して撮影中に倒れたって」


…悠里さんが危篤…
…吐血したって…

その言葉を黙って聞き入れながら何も言葉にできない。
少しも反応できない私を優斗が少し焦ったように声をかける。

「…大丈夫?俺の言うこと聞こえてる?」

「……」

「先生からの電話だと意識もないらしくて…」

どうしてだろう、頭の中がふわふわする。

優斗がちゃんと説明してくれてるのに関わらず何故か頭に入ってこない。

これは本当の出来事だろうかと、半信半疑で耳を傾ける私はこれがどこか他人事のような気がしてる。
言われていることの深刻さが分からず、ただ黙り込む私の手を優斗の手が上から包み込む。


「大丈夫、俺がいるから」


いつも温かいはずの手がやけに冷たかった。
そして優斗の心配そうな視線を何度も感じた。私を安心させるような言葉も何回か聞き流しながら気づけば病院に着ていて、受付を済ませた私達は手術室の前まで辿り着く。
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