あなたと私と嘘と愛

「あ、あのっ…」

慌てるわこちゃんの隣で優斗が静かに私を見下ろした。

「…そうだよ。悠里さんはもう長くない。癌なんだ。余命宣告も受けてる」

真っ直ぐ真剣な表情を向ける優斗に私は目を見開きまたしても言葉を失くす。
次の言葉が見つからなくて、動けなくなった私の肩を優斗がそっと掴む。

「…ごめん亜香里ずっと黙ってて。…けど、悠里さんにきつく言われてたんだ。亜香里にだけは絶対言うなって」

そこで今度はわこちゃんがガバッと深く頭を下げる。

「私も…ごめんなさいっ!知っていながらずっと知らない振りをしてましたっ。亜香里さんのことを思ったらちゃんと言わなきゃいけなかったのにっ、悠里さんが頑なにそれを嫌がって、それで…っ」

今まで言えなかったのだとわこちゃんは感情的に泣き崩れた。
言ったら最後、今後のスケジュールを全てキャンセルすると脅されてたのだという。

そんな真実を突きつきられて当たり前だけど酷い動揺が襲う。ずしりと頭が重くなり、目の前の景色が色褪せていく。
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