あなたと私と嘘と愛
「なんかドラマみたい」
「え?」
「まるでドラマの撮影みたいだね」
こういう光景はテレビの中で何度か見たことがある。
女優としての母が倒れて運ばれるシーン。
だからなのか、やっぱりこれが嘘のようにしか思えず、優斗達から言われた言葉がどうしても現実に受け止められなかった。
「亜香里…」
「亜香里さんっ…」
けどこれは現実で、そんな私の言葉を聞いた優斗とわこちゃんの焦った声が重なった。
「もしかしたらあそこにカメラでもあるの?ドッキリだったりして」
冷えきった声を出した私の手をすかざず優斗の手が掴んだけど、
「ねぇ、優斗もそう思わない?」
「亜香里っ」
ひどく焦りを含んだ様子の優斗を真っ直ぐ見返す。私の顔からは喜怒哀楽の感情が消失していくのが分かる。
「私、帰る…」
「…え?」
「とりあえず落ち着いたなら良かったじゃない。後は優斗がついててあげて。先生からもこの後話があるんでしょ?」
「や、でも…」
「だって私がいたらまずいんじゃない?あの人の意識が戻った時私がいること知ったら契約違反だよ。怒られるのは優斗だよ?」
優斗がいつになく驚いた表情を向けるから、やけに冷静な声が出る。
なんかもう私はここにいちゃいけないような気がして一刻も早くこの場からいなくなりたかった。