あなたと私と嘘と愛
「そうよ、本当よ」
なのに母は躊躇わずにそう言った。
「人の寿命は早かれ遅かれ人それぞれ。私の場合はそれが普通の人より少し早いってことね。けどもういいの。亜香里とも最後こうして話せた訳だし、心残りは帳消しよ。しいて言うならあなた達の結婚式が見れないのは残念だけど、けど私は…」
「嫌だっ」
「…え?」
「そんなの嫌だっ、まだ死なないでっ、ずっと生きててよっ!」
ついにその場に立っていられなくなった私は崩れるようにベッドの上に顔を突っぱねた。バランスをかろうじて膝立ちでとりながら取り乱れるように声を上げる。
「私を一人にしないでよっ」
「…あ、かり…」
「もっと一緒にいたいのに…っ」
本当はずっと側にいたかった。話したかった。
普通の親子のように接したくて仕方なかったのに。
「ずっと我慢してたっ。私はお母さんが思ってるほど聞き分けなんてよくないし強くなんてない…っ!」
今まで押さえてたものが溢れ出してくる。爆発した感情はきっとずっと長年の母への押し殺していた感情だ。言えなかった本当の気持ちが次から次へと声に出る。