あなたと私と嘘と愛

「もっと親子らしいことをしたかった…っ」

一緒にご飯を食べて会話して。
ショピングにランチ。旅行だって喧嘩しながらでもしてみたかった。
普通の親子がしてることをしたかった。

「ずっと寂しかったっ」

泣いて泣いて泣いて。
駄々をこねるみたいに泣きじゃくる私を母はどんな顔をして見ているのだろう。
呆れてる?
困ってる?
それとも…

「…ばかね…」

頭の上に母の手の感触がした。
その言葉にゆっくり顔を上げると、呼吸が止まりそうになった。

「…っ…」

母もまた同じように泣いていた。
瞳から涙を流して私を見てる姿は何も着飾ってないのにとても綺麗。
女優でもない。芝居でも作り物の涙でもない。そこには母としての母が泣いている。

「…っ…」
「……」
「…ばかな子ね…」
「…お、かあさ…」
「こんな日がくるなんて…」

こんなはずじゃなかったのにと、母は涙ながらに呟いた。

「これが撮影なら良かったのに…」
「……」
「これが撮影ならどんなによかったか…」

母の本音に二人して泣いた。
お互い手をぎゅっと握りしめ合いながら今まで流せなかった思いが止めどなく溢れてく。
きっと死ぬのは誰だって怖い。
それは母だって同じ。
だからこそ願ってしまう。

「…お願い、できるだけ長く生きて…っ。1日でも多く一緒にいたいからっ…」

これが現実ならせめて…
今はそれだけを切に願う。
これが私の譲れない我が儘だ。
これが母に向ける最初で最後の我が儘だから。
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