あなたと私と嘘と愛
「あの、差し支えなければ聞いてもいい?あの記事って事実っていうか本当なの?」
優斗の顔色を伺う。
さっきとは違うドキドキを感じながら返事を待つ私に優斗は顔色を変えずスプーンを置く。
「事実だよ。全部本当」
その顔を真っ直ぐ見つめる。
「俺には両親もいないし姉弟もいない。産まれてすぐに施設の前に置き去りにされてたみたいだから」
それを素直に聞き入れる。
そっかと流れるように飲み込めたのはきっと優斗がその事実を冷静に、とても穏やかに伝えてくれたから。
「高校卒業するまではずっとそこが俺の家。卒業してからは仕事を見つけて自立するっていうのがそこの施設のルールだったから」
「そう…」
聞きながら自分が想像していたものと掛け合わせていく。ずっと聞けなくて自分なりに考えていたことがピタリと当てはまっていく。
だからどこか納得してしまった。
「だからなんだねー。優斗がうちの母と互角に言い合えるのって、非常識な契約にもサインしちゃったのって、優斗も普通じゃなかったからなんだ」
「うんそっか」っと笑った私にこの時ばかりは驚く優斗が瞳に映る。
「私と一緒だ」
「…え?」
「世間ずれ仲間ってやつ?そもそも普通ってなんだーって思ったりもするけどね」