あなたと私と嘘と愛

「結構です」

この人の自信が嫌になる。
べつに今の暮らしに不満がある訳じゃない。問題なく快適なわけで、

「金持ちに憧れてる訳じゃないので、あなたの夫になるよりマシです」

「ふふ、言ってくれるわねぇ。でもそういうところも好きよ？見たところ女の影も無さそうだから尚更合格」

だから何なんだと突っ込みたくなる。

「わざわざ家にまで押し掛けて来てそれを確かめにきたんですか？」

「もし他の女といたら迷いなく別れさせようと思って」

「最低ですね」

本当に最低だと思う。やっぱり人間性を疑いたくなるけれど、この前のニュースのこともあり、俺は黙ってお茶ぐらいは用意する。

「お腹すいたんだけどー」

「知りませんよ。俺はもう食べたんで」

「じゃあ、あなたを頂戴？優斗」

「アホですか」

ここ最近頭痛が酷いのはあなたのせいだ。こんなあからさまなセクハラを許していていいのだろうか？と思いながら話題を変える。

「それよりニュース見ましたよ。まさかあの子がって思いましたけど…」

「ああ、あれね。事務所の社長さんもお気の毒よねぇ。まぁこの業界じゃよくあることだけど」

「もしかして知ってたんですか？こうなることも分かってたんじゃないですか？」