あなたと私と嘘と愛

最強だな…
この人はやっぱり敵にしたくないタイプだと思い、残された俺と悠里さんの間に沈黙が訪れる。
そして俺はあえて前を向いたたままさりげなく自分の腕を組む。

「まったく、今後の撮影が思いやられるわよ…」

「帰ったんじゃなかったんですか?」

悠里さんの嘆きにはスルーして俺はさらりと言葉を折り返す。
なぜここにまだいるのか?とか、さっきまでいたスティーブの存在が見当たらないこと。様々な疑問が脳裏に浮かぶ。

「スティーブと食事に行ったんじゃなかったんですか?」

「あら、気にしてくれてたの?」

半分嫌味で言ったつもりだが、悠里さんには通じるはずもなく、艶やかな返答が返ってくる。

「やきもちなら喜んで貰ってあげるわよ?」

「そんな感情はないですが…、けど、ありがとうございます」

「あら、なによ改まって?」

「助けて頂いたんで」

「別に私は自分が正しいと思ったことしかしてないわよ」

それが普通の人ではなかなかできないんだけど、この人にはできちゃうんだよな。
はぁ…とため息がこぼれ落ちる。

「どうして庇ってくれたんですか?」

「別に庇ったつもりはないけど。ただ腹は立ったわね」

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