あなたと私と嘘と愛
「あなたに」
「…え?」
「何あんなひよっこ大根に大人しく言われたままなのよ。少しは言い返したってバチは当たらないでしょ」
一瞬何を言われてるのか分からなかったが、悠里さんの苛立ちの意味に気付いた俺は「ああ」と頷く。
「別に…本当のことなんで。昔から言われ慣れてるし、いちいちそれに反応してたら面倒なので」
「冷めてるわねぇ…」
「感情のコントロールは得意な方なんですよ。先に頭で整理して冷静になることが癖付いてるのかもしれません」
それが一番上手くいくんだと、俺なりに子供の頃から学んだもの。
「のわりに、さっき私とスティーブがい一緒にいるのを見た時あなた苛立ってなかったかしら?」
「……気のせいじゃないですか?」
だとしたらそれは全てあなたの身勝手な振る舞いのせいだ。振り回されてるこっちの身にもなってほしい。
「ふふ、そう。良く分かったわ。やっぱりあなた私の夫になりなさいよ」
「は?…また、それですか?」
前を向いたままの俺だったが、流石に悠里さんの方へと視線を変える。
「もう用済みじゃないんですか?ここ最近連絡もなかったし、新しい恋人もいるみたいなので」
「それはノーよ。私なりに考える時間を与えてあげてたの。こう見えても優しいから」