あなたと私と嘘と愛
「まったく、亜香里が可愛いのは分かるけど、今は我慢しなさい優斗。もう撮影の時間だから」
「お母さん!」
悠里さん達の登場に慌てたように俺から離れる亜香里は一瞬で顔を赤らめる。それに名残惜しさを感じながも、俺が素直に従うと車イスを押すうららさんは楽しそうに笑う。
「ふふ、優斗くんもまだまだ若いわねー。私から言わせたらオスの繁殖期?」
「…う、うーちゃんまでっ…」
何故か俺より先に反応する亜香里は恥ずかしさからなのか、ますます顔が真っ赤に染まる。
「まぁ、目の前にこんなに綺麗な女性がいたら仕方ないわよね?」
「それもそうね。うちの子冗談抜きで可愛いから」
「確かに」
「もうっ…」
3人に弄られる亜香里はたじたじになりながらも俺に助けを求める。
それがまた可愛くて、やっぱり亜香里のこういう素直な反応を見ると気分が上がるわけで、自然と笑顔も増える。
「今日は楽しみましょうね。素敵な家族写真にしなくっちゃ。優斗くんももう立派な家族の一員ね」
「ふふ、そうねー。うんと素敵に撮って貰いましょう。ほら優斗、そのまま亜香里をエスコートしてちょうだい」
「…あ、はい」
そして俺は亜香里の手を繋ぎ、歩こうとして立ち止まる。
「……」
家族、か…
当たり前に言われたその言葉にとても不思議なものを感じる。それに俺も入るのか…と、なぜか今までで一番その言葉か俺の中に深く突き刺さる。
「…ん?どうかした優斗?」
「…いや…」
思わず順番に3人へと目を向ける。
そうか…
契約を結んでいた時よりも今の方がより家族らしく見える。
今ままで足りなかったもの。子供の頃から望んでたものが今現実のものになっているんだと、その光景を見て改めて実感させられる。