あなたと私と嘘と愛
それが言葉で言い表せないぐらい、とても温かくて心地いい。
「……ふっ」
それを改めて実感すると共に一つの感情が込み上げる。
ずっと曖昧なものだった。
悠里さんに対して妻だけど妻じゃない。ましてや友人や恋人でもないこの関係を言葉にするなら何だろうと。
他人だけどほっとけなくて、彼女には色々と学ばせて貰ったこともある。
不器用な優しさにどこか情を感じながら、どれも説明できない心情が今、たった今分かった気がする。
「お母さん」
「……え?」
俺の声に驚いた悠里さんが振り返る。
言葉にした瞬間、それが一番しっくりと当て嵌まる。
「一度そう呼んでみたかったので」
「…は?」
「ありがとうございます、お母さん」
「…何よ…。急に意味の分からないことを言わないでちょうだい。それは亜香里のお母さんという意味?それとも…」
「どっちもですよ」
もしも、俺にこんな母親がいたら面白いだろうなという願望。きっと振り回されて大変だというのは想像できるが、…けど、もし次に生まれ変われるのならこの人の子供になってみたいと思ってしまう。
「…なっ、バカね。あなたみたいな生意気な子を育てた覚えはないわ。年も幾つだと思ってるのっ」
そう言いながらそっぽを向いた悠里さんが珍しく同様してる。
不意に視界に入った悠里さんの頬がほんのり赤い。