あなたと私と嘘と愛
きっと相当ハードなんだろう。
「大変なんですね」
ついこぼれてしまった言葉に坂井さんは嫌な顔せず「もう慣れましたけどね」なんて笑ってくれた。
そんな笑顔にちょっぴり癒される自分が不思議だった。
こんな風に男性と自然に話せてること自体が意外。会話はポンポン弾み、気付けばすでに目的の駅にたどり着いていた。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「こちらこそ」
楽しくてあっという間だった。
改札口が別の為ここでお別れになるから向い合うと、彼の視線が私の手元に注がれる。
「…その荷物、さっきから気になってたけど、もしかして今日は恋人の家にお泊まりですか?」
「ま、まさかっ。女の子の友達です!」
「本当に?」
「もちろん!残念ながらそういう相手に恵まれなくて…」
「…そう、なら良かった」
安心したように目を細めた彼に思わず「えっ」となる。
彼の眼差しが一瞬熱のこもったものに変わり真っ直ぐ見つめられた。
「だったら僕にもまだチャンスはありそうだ。期待が持てます」
「……」
「それじゃ…また。治療の時会えるのを楽しみにしてます」