あなたと私と嘘と愛

そして坂井さんが診療に来たのはそれから1週間後のことだった。

珍しく予約通りに来た彼に気持ちが弾む。

彼のカルテを見たとき、想像以上にドキッとした自分に驚いたが、それ以上にテンション高めだったのが友人の真由だ。

仕事中の為あからさまな態度は示さなかったものの、隙を見ては私に小声で「来たね」とちょっかいかけてくるのはちょっと困った。

そんな私だったけど、彼を待合室から診察室に呼ぶ時、さすがに少し緊張した。

「こちらへどうぞ」と診察の椅子に案内した時あまり目が合わせられなかった。
だけど彼の首回りに紙エプロンを巻き終えた瞬間目が合った彼にニコリと微笑まれた。


「この前はどうも」

「…あ、こんにちは…」


恥ずかしさのあまり仕事用の笑顔になる。
少し俯き加減でミラーや探針、ストッパーにエキスカ。バキュームなどの用意をすると、それを見ていた彼の口元が優しく緩む。


「今日は予約通りに来れました」

「…はい、良かったです。その後痛みの方はどうですか?」

「あれからはずっと落ち着いてますよ。順調です」

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