あなたと私と嘘と愛
「…可愛いな…。そんな月島さんも気になります。いや…もっとこっちに振り向かせてみたい」
ぎゅっと握られた手に一瞬力がこもる。
坂井さんの眼差しが私の思考を鈍らせ、そして驚きに変える。
「今度よかったら食事にでも行きませんか?」
「……え」
「もし気が向いたら1度でいい。あなたのプライベートを僕にくれませんか?」
「…あ、の……」
「待ってます。僕の番号良かったら。迷惑でなければそこに書いてある番号に連絡ください」
爽やかに目を細めた彼に私は何の反応もできなかった。
ただ目を見開いていただけ。
言葉なんか出せず呆然としていると、彼はいつの間にかチェアーから降り私の横を通りすぎていく。