あなたと私と嘘と愛
ほんの1.2分ほどのやり取りだったと思う。
いつもの何事もない診察のはずだった。
なのに尋常じゃないほどのトキメキが私に舞い降りた。
例えていうなら私の所にだけスポットライトが当たったような。
主役になったような衝撃。
すぐにハッとし、慌てて振り返ったけどすでに坂井さんは待合室に戻ってしまった後だった。
そのかわり気付いたらすぐ後ろに真由がいた。
「そんなとこに突っ立ってどうしたの?」と不振な顔つきでこっちを見つめている為、私は我に返りながら「別に…」といい残し右手をポケットに入れた。
そして片付けに取りかかる。
真由には改めて後で話すとして、今は仕事に集中しなきゃ。
だけどこの日、ポケットにしまった紙が気になってしかたなかったのは言うまでもない。
途中トイレに行き、先ほど貰った紙をこっそり見た私はまたしても赤面する羽目になる。
『あなたに一目惚れしました』と、とてもシンプルな言葉で表現された下に彼の電話番号が書かれてあった。
胸を打たれるということはこういうことなのかと初めて知った。
頭の中で恋の予感の鐘が鳴り響く。
案の定トキメキが収まらず、それからは仕事以上に彼のことばかりを考えていた。