あなたと私と嘘と愛
何だろう、この感じ。
やっぱり変わってる。掴み所がない人だ。
今まで母が連れて来たタイプの人とは一味違う。
「お願いがあるの。できれば私にあまり構わないでほしい」
深く関わったら危険だと本能が察する。
初めて会った時、不覚にもビリリとときめいてしまったけれど、きっとそれは勘違い。
この整った容姿だもん。
小中高と女子校で男性に面識が少ない私のことだ。ちょっとだけ錯覚してしまっただけだ。
「分かった。じゃあ何か困ったことがあれば言って?」
優斗は真顔でさらりと言い放ち再びすいすいと手を動かした。
優しい言葉を向けながら、もう私の存在なんかさもどうでもいいかのよう、ある程度吸い終えるとリビングからさっさと出てしまう。
(何だかやけに淡々としてるな)
きっとその場しのぎの言葉だろう。
母と約束したからしぶしぶといった感じ?
上手く言いくるめられた気がたけれど、私にとってもその方がありがたい。
変に父親ずらされてもそれこそそっちの方が困るから。
できるなら今まで通りの生活を変えたくない。
自分のことは自分でできる。
この時私は本気でそう思っていた。