あなたと私と嘘と愛

「あの、月島さん。こうして電話貰えたってことは少しは期待してもいいですか?」


落ち着いた穏やかな声だと思った。
普段聞いてる声より電話越しの方が若干低く聞こえるが、それもまたいい。大人の色気を感じる。


「……月島さん?」

「…あ、すみません。少し緊張しちゃって」

「いや、そんなあなたも素敵です。それに僕も同じですから。正直さっきからテンション上がりっぱなしで」


「逆に引いてませんか?」と聞かれ私は大袈裟なぐらい顔を横にふった。
当然相手には見えていないから、言葉でもちゃんと「まさかっ」と否定する。


「じゃあ今度僕と食事に行ってくれますか?」


その言葉にごく自然に「はい」と頷けた。
坂井さんという人をもっとよく知ってみたい。
素直な思いとこのチャンスに乗っかってみたい。

今の冴えない自分から何か変われるんじゃないかって、これが淡い期待と恋心の始まりだった。

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