あなたと私と嘘と愛
「とりあえず行きましょうか」
ドキドキしながら坂井さんの言葉に頷いた。
近くのパーキングに彼の車が止めてあると聞き、まず私達はそこへ向かって歩き出す。
横に並んで歩くのが恥ずかしかったから、坂井さんのちょっと後ろを保って着いていく。
やっぱり緊張。
生まれて初めてのデートだもん。
期待と恥ずかしさが混じり自分から会話を出すことができない。
「映画の前にまずお昼ご飯でいいかな?」
「あ、はい。お任せで…」
助手席を開け、さりげなくエスコートしてくれる彼に頭を下げる。
その仕草は慣れていて、今までお付き合いしてきた人達にもこんな感じだったのが伺える。
彼の車は黒のワンボックスだった。
社内も広くとても綺麗。ふわり香る芳香剤もとてもいい匂いだ。
そんな中私はかなりの緊張に襲われる。
「ふ、もしかして緊張してる?」
「あ、はい、いや…」
「だよね。僕も同じだから」
「え…坂井さんも?」
目をパチパチとして坂井さんを見た。
意外、これも社交辞令?
こんなに余裕そうなのに。