あなたと私と嘘と愛

「とりあえず行きましょうか」


ドキドキしながら坂井さんの言葉に頷いた。
近くのパーキングに彼の車が止めてあると聞き、まず私達はそこへ向かって歩き出す。

横に並んで歩くのが恥ずかしかったから、坂井さんのちょっと後ろを保って着いていく。

やっぱり緊張。
生まれて初めてのデートだもん。
期待と恥ずかしさが混じり自分から会話を出すことができない。


「映画の前にまずお昼ご飯でいいかな?」

「あ、はい。お任せで…」


助手席を開け、さりげなくエスコートしてくれる彼に頭を下げる。
その仕草は慣れていて、今までお付き合いしてきた人達にもこんな感じだったのが伺える。


彼の車は黒のワンボックスだった。
社内も広くとても綺麗。ふわり香る芳香剤もとてもいい匂いだ。

そんな中私はかなりの緊張に襲われる。


「ふ、もしかして緊張してる?」

「あ、はい、いや…」

「だよね。僕も同じだから」

「え…坂井さんも?」


目をパチパチとして坂井さんを見た。
意外、これも社交辞令?
こんなに余裕そうなのに。

< 70 / 471 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop