あなたと私と嘘と愛

でも、それでも聞きたくはなかった。
今は聞きたくなかったよ。
彼の口から母の褒め言葉なんか聞きたくない。

正直ショックを受けていた。
さっきまでの高揚感がまざまざと遠退いていく。


「……坂井さんは年上の女性がタイプなんですか?」


だから情けない声が出た。


「いえ、タイプというより憧れですかね?…あ、ていうかすみません。僕の話しばっかりでしたね。ちなみに月島さんはどういうタイプが好きなんですか?」


そこでようやく坂井さんが振り返った。
その時の彼の表情は印象的だった。むりもない。
後ろに着いてきてると思っていた私が後ろの方で立ち止まってるんだもん。その驚きは目に見えて分かる。


「……え、あれ?月島さん?」


私は顔を曇らせたまま、返事もしなかった。
当然彼はそんな私を心配し駆け寄ってくる。


「どうしました?何だか顔色が…。気分でも悪くなりました?」


顔を覗きこまれ、視線だけを合わせた。
その顔は分かりやすく心配そう。
それを見て私は少しだけ我に返る。
…今はデート中。これはダメだ。ちゃんとしないと。

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