あなたと私と嘘と愛
「優しいんですね」
「本当のことを言ってるだけですよ」
彼は優しげに目を細めた。
込み上げてくる熱いものを紛らわしたくて、目の前のアイスティーを手に取った。
本当に優しい人…
「これ飲んだらどこ行きましょうか?」
だから明るくそう言った。
「まだ僕と付き合ってくれるんですか?」
「も、もちろんです。まだ夕方ですし、坂井さんさえ良ければぜひ」
やっと普通の感情が戻ってきた。
自然な笑顔も出せるように。
だから母への嫌な感情は奥底へと押し込んだ。
「じゃあ、ちょっとその辺でショッピングでもします?そのあと夜ご飯でも食べに行きましょうか?」
「いいですね。そうしたいです」
純粋に彼といたいと思った。
まだ沢山話してみたいと思ったからこそ、あんなマイナス思考なんて吹き飛ばそうと思った。
だって母は母。私は私…
「良かった。だいぶ顔色が良くなりましたね」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
店を出ると坂井さんにさりげなく手を繋がれた。
「え……」
「ほら、また気分が悪くなってもすぐ助けられるように」
「……」
「ふ、赤くなった顔も可愛いですね。ますます離したくない」
もうたじたじだ。
彼のペースに呑み込まれてしまう。
男の人と一緒に並んでこんなにドキドキさせられたのは初めて。
「何かあったらすぐに言ってくださいね」
「……ありがとうございます」
かなり照れたけど、そっと坂井さんの手を握り返す。
途中一喜一憂したが笑顔な時間が過ぎていく。とても楽しいデートになった。