あなたと私と嘘と愛

「じゃあ、良かったら食べない?」


思わず頷いてしまったのは単純にカニの誘惑に負けたから。
不本意だが今はまだ色気より食い気。
せっかくのカニを無駄にしても悪いし、カニに罪はない。

それ以前に最近の私は機嫌がよく、こんな突拍子もない優斗との絡みも案外引きずらず受け流すことができるようになっていた。
それも坂井さんというオアシスがいるおかげ…


「すご、このカニ大きくないですか?」

「食べごたえがありそうだよね」


優斗がカニを鍋に入れて茹でる。
2匹ある為もう1つはカニ鍋にもする予定。私は見てる事しかできなかったけれど、優斗が手際よく調理をしてくれた。


「前から思ってたけど、料理上手ですよね?」

「別に普通だよ。独り暮らしが長かったからね」

「ちゃんと自炊してたんですね」

「まぁ、やれた時はね」


母は家事が一切できないからちょうどいいのかも。
本人にまったくやる気がないため、こういう旦那さんが適してると思う。

そしてふと思った。
坂井さんはどうなのかなって。
機会があったら聞いてみようかな?
作れない人だったら私が作ってあげたいなと思う。

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