あなたと私と嘘と愛

ほかほかの湯気が揺らぐ中、「いただきます」と手を合わせ目の前のカニに手を伸ばす。

あれから手際よく優斗が調理してくれたおかげでテーブルの上にはカニ料理がいっぱい。

シンプルに茹でたものと昆布でだしを取り、白菜や白ネギ、椎茸やニンジンの入ったカニ鍋。

おまけにバターでソテーしたむき身のバター焼きまであった。
それがまたこくがあり絶品で最高。素直に「美味しい」と感想を言ってしまった。


「なるほど、食べてる時は素直なわけね」

「…は?どういう意味ですか?」

「別に…。見たままの感想を言っただけ」

「私も…、料理だけは認めてあげますよ」


ふんっと視線を反らしカニをほうばる。
美味しい、幸せ、温まる。
これで目の前にいるのが坂井さんなら尚更幸せなのにと心の中で悪態をつく。

一瞬このバター焼のレシピを教えて欲しいなんて思ってしまったが、この人から教わるのはどうしても癪で、やっぱり聞くのを止める。


「そう言えば来週からイタリアに撮影に行くみたいですね」

「ああ、悠里さん?お土産沢山買ってくるって連絡があったよ」

「でも1ヶ月ですよ?また暫く会えないじゃないですか。寂しくないんですか?」


自分のケータイに目を向けながら彼に問う。
さっきからちょくちょく入ってくる坂井さんとのラインを拝読し、そして返しながら優斗へも目を向ける。

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